フェロトーシスとオンコーシスの複合がん治療
フェロトーシス(Ferroptosis)とオンコーシス(Oncosis):酸化療法と遺伝子治療の複合がん治療
フェロトーシス(がん細胞に多く含まれる鉄イオンを利用して、がん細胞を死滅させる治療法)
オンコーシス(がん細胞へ酸素や栄養の補給を遮断し、虚血作用によりがん細胞を大量消滅させる治療法)
フェロトーシスとオンコーシスを複合的に行うことにより相乗的な治療効果が期待できます。
(1)酸化ストレスによるフェロトーシス
※フェロトーシスの発生 がん細胞内には鉄イオンが多く含まれていますので、そこにフェロトーシスを発生する薬剤(アルテスネイト注射薬など)を投与すると鉄イオンと反応してフリーラジカルが発生し、がん細胞は選択的に障害を受け消滅します。
※HIF-1とトランスフェリンレセプター エンドスタチン遺伝子が発現すると、がん細胞に酸素や栄養が補給されなくなりますので、がん細胞は低酸素誘導性因子1(HIF-1)という遺伝子を活性化して、低酸素環境に適応して生き延びようとします。その際、がん細胞はトランスフェリンレセプターを介したメカニズムで鉄を多く取り込みます。鉄ががん細胞の増殖に必要なためです。特に細胞分裂の早いがん細胞ほど鉄を多く取り込んでいると言われています。
※ビタミンCなどの抗酸化物質の摂取 がん細胞のフェロトーシスに伴う副作用としての正常細胞への影響は軽微ですが、翌朝にビタミンCなどのサプリメントやオレンジジュースなどの抗酸化物質を摂取することは、身体状況を好ましく維持する上で効果的です。
(2)虚血によるオンコーシス
※エンドスタチン遺伝子 腫瘍血管の新生を抑え、がんを酸素や栄養不足にして壊死させる方法です。エンドスタチン遺伝子をがん細胞内に導入することで、エンドスタチンという特殊なたんぱく質が発生し、腫瘍の血管新生を抑止します。
※血管新生 がんには、もともと血管は備わっていません。そこでがんは、新しい血管(腫瘍血管)を作って、周囲の血管から血液を引いてくるようになります。一度血管ができると、がんはどんどん大きくなり(進行がん)、そして体中に転移を起こします。
※虚血 ヒトの細胞や組織は虚血すると死滅します。細胞が壊死するからです。脳では数分間、肝臓では1~2時間くらい経つと再び血流が戻っても回復することはできません。つまり、酸素や栄養素が絶えず供給されなければがん細胞も死滅するのです。また、血管がなければ、がん組織は1~2mm以上の大きさには成長しないと言われています
※体内物質なので副作用がない エンドスタチン遺伝子導入によって発生するエンドスタチンタンパク質は、もともと体内にある物質なので毒性や副作用がありません。この点が他の抗がん剤と大きく違っているところです。
(3)フェロトーシス(Ferroptosis)とオンコーシス(Oncosis):酸化療法と遺伝子治療の複合がん治療 アルテスネイトとの併用 エンドスタチン遺伝子導入治療にアルテスネイトによる治療を加えることで、相乗的な効果が期待できます。エンドスタチン遺伝子導入によって低酸素状態になったがん細胞はさらに鉄が集積しやすい状況になるため、アルテスネイトでより強い酸化ストレスを受けることになり、崩壊しやすくなるからです。