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内科・小児科 診療科目

妊婦・授乳婦に対するインフルエンザワクチン接種について

妊娠を考えておられる方や妊婦・授乳婦がインフルエンザワクチンを接種する意義について

また、接種にあたって注意すべき点について 

インフルエンザQ&Aより (文責: 山口晃史先生 国立成育医療研究センター)

 

妊娠中の母体は胎児という一種の外来抗原を寛容するために、免疫機構に変化が起こり非妊娠時に比べ易感染性となります。さらに、妊娠初期では悪阻による体力低下、中期以降は子宮の増大に伴う横隔膜の挙上と胸郭の側方への拡大、一回換気量の増加、必要酸素量の増加による肺への負荷、循環血襲量の増大による心臓への負荷が加わり、心肺機能の低下が示唆されております。これらのことより、妊婦のインフルエンザ感染症は重症化する傾向にあり、積極的なワクチン接種が世界的に勧められています。

妊娠中のインフルエンザワクチン接種について

妊娠中のインフルエンザワクチン接種においては、免疫原性と安全性という二つの視点から考察する必要性があります。免疫原性においては、前述した理由により妊娠という免疫機構の変化した状態での免疫応答で感染防御に十分な抗体を獲得することが可能であるか否かの評価、安全性においては、母体への副反応、流・早産、催奇形、胎児の成長への影響について評価が行われてきており、免疫原性は非妊娠時と変わらず約90%の被接種妊婦が免疫を獲得することができ、安全性は非妊娠時やワクチン非接種妊婦と変わりのない報告がなされています。しかし、この結果はアジュバントを含まない不活化インフルエンザHAワクチンに限られており、今後登場してくると思われる購化鶏卵由来のスプリットワクチン以外のMDCK細胞(イヌの腎臓由来の細胞)もしくはVero細胞(アフリカミドリザルの腎臓由来の細胞)由来のHAワクチンや購化鶏卵由来の全粒子ワクチン、アジュバントを含むものや、生ワクチンなどについては、まだ安全性に関する情報は十分でなく、現時点では評価できていません。

妊婦・授乳婦がインフルエンザワクチンを接種するメリット・デメリットについて

妊婦のワクチン接種によるメリットは、完全な感染防御は行えませんが、感染しても重症化することを防ぐ点で有効と評価されていることが一つです。また、母体の免疫獲得により、胎盤を介して胎児へも抗体が移行するため、妊娠中のインフルエンザワクチン接種は出生後の乳児の感染防御、重症化の防止へのメリットもあります。この乳児への免疫は約6カ月持続すると評価されており、ちょうど、乳児へのワクチン接種が有用でないと考えられている時期をカバーすることができます。授乳婦のワクチン接種によるメリットは、母親自身の発症、重症化を防ぐことに加えて、直接的ではありませんが母親が感染予防することにより、乳児への伝搬を防ぐことも一つでしょう。妊婦のワクチン接種によるデメリットは母体の副反応、アレルギーであると考えられますが、その発生頻度は妊娠の有無に関係ありません。また、接種による自然流産、早産、胎児発育異常、奇形などのリスクに関しても増加するという報告はみられていません。授乳婦のワクチン接種のデメリットは、妊婦同様、授乳婦自身の副反応やアレルギーと考えられます。なお、不満化ワクチンですので、ワクチン接種で母乳を介して乳児が感染することはありません。

添付文書は有益性での判断ですが、最終的には誰の判断でしょうか?

妊娠中のインフルエンザワクチン接種の安全性に関しては十分な情報が蓄積してきており、母子ともにその有用性が明らかとなっています。すでに世界的に接種が勧められてきており、近年では本邦においてもその認識が高まり、有用性を重視した判断が一般的となっています。問診時、①感染すると妊婦は重症化しやすいこと、②母子ともに免疫を獲得することができること、③胎児への影響は自然発生的なリスクと変わらないこと、④副反応の発生率は非妊娠時と変わらないこと、を説明し、他のワクチン接種と同様に最終的に接種希望者自らの意志で予診票に署名をいただくことが必要となります。

*添付文書の記載事項

【妊婦、産婦、授乳婦等への接種】妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。なお、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。

ワクチン接種後どれくらい避妊すべきですか?

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、生ワクチンではありませんので、接種により感染する可能性はなく、避妊をする必要性はないと考えます。

妊娠何週目から接種できますか?(妊娠初期の接種について)

妊娠初期より接種が可能です。米国疾病対策センター(CDC)を中心に米国では1999年に胎児の器官形成期にあたる妊娠初期をできるだけ避け、14週以降の妊婦全例へのインフルエンザワクチン接種を推奨しており、加えて、呼吸器疾患、心疾患や糖尿病などの基礎疾患があり、インフルエンザ感染により合併症を伴う危険性が高い場合には、妊娠時期にかかわらず接種を受けるべきであるとしていました。その後、2004年のCDCの勧告でインフルエンザワクチン接種推奨群には妊娠初期を含むすべての妊娠週数の妊婦が対象、と変更されています。接種の危険性に関しては、接種した妊婦2,000例以上の情報がありますが、妊婦への副反応や胎児への影響は認められておらず、その安全性は高く評価されています。従って、国際的には、妊娠中のインフルエンザワクチン接種は安全で、接種による有益性が危険性を上回るとの認識のもとに推奨している国が多いようです。わが国でも2009年に添付文書の改訂が行われ、現在の記載となっています。

妊娠何週目まで接種できますか?

妊娠週数は問いません。母体側からみた場合、接種による副反応は妊娠週数に関係はなく、どの妊娠期の接種でも安全とされています。胎児側からみた場合においても、どの妊娠期の接種でも胎児への安全性には問題はないと考えられています。胎児への抗体移行を期待した場合は母体の抗体価の上昇と胎盤を介する抗体移行に必要な時間を配慮すると、少なくとも出産予定日の3-4週間前に接種したほうが有用と思われます。

インフルエンザワクチンの接種が推奨される妊娠期はありますか?

いつでも推奨されます。妊娠初期に接種した場合でもその後の抗体価は出産まで持続し、胎児へも同様の効果が得られます。しかし、出産へ向けて徐々に抗体価は低下しますので妊娠初期に接種された方で出産時に流行が予測される場合には、後期での再接種を考慮に入れてもよいかもしれません。

産後(出産直後を含む)すぐに接種できますか?

可能です。不活化ワクチンですので、産後すぐに接種しても母体へ感染することはありません。従って、母体から乳児へ感染する可能性もなく、授乳期の母体へのワクチン接種も安全と思われます。出産直後の接種においては出産に伴う合併症(細菌感染症など)や乳腺炎で発熱することがあり、ワクチンの副反応と混同する場合がありますので、十分な問診を行い接種することを勧めます。

妊婦に接種するにあたって注意すべき点はありますか?

妊婦に対して特別な注意事項はなく、予診票に従って接種を行えば特に問題はありません。アレルギーに関しても、卵アレルギーがあり日常的に鶏卵の摂取を控えている方はワクチン接種を避けるのか妥当と考えます。

乳児にアレルギーの既往がある場合、その授乳婦への接種は可能でしょうが?授乳婦へのワクチン接種で注意すべき点はありますか?(母乳中への移行は?)

孵化鶏卵由来のスプリットワクチンでは、ロットによって差はみられますが、数ng/mL程度の卵白アルブミンが混入する可能性があります。しかし、母親への皮下接種後、卵白アルブミンが母体血流を介して母乳中へ移行する量はごく微量と推測され、その母乳から児へ吸収される量はさらに少ないと考えられます。従って、乳児に卵アレルギーの既往がある場合に、その授乳婦への接種においても特にリスクの増大へは至らないと思われます。一方、妊娠期と同様に卵アレルギーがあり日常的に鶏卵の摂取を控えている授乳婦の方は、ワクチン接種を避けるのが妥当と考えます。

妊婦・授乳婦への接種で胎児・乳児に免疫は付与されますか?

妊娠中の母体へのワクチン接種では、胎盤を介した抗体移行により胎児の免疫獲得は可能ですが、授乳婦へのワクチン接種では、乳児に免疫は獲得されない可能性が高いと思われます。現在国内で承認されているインフルエンザワクチンは、皮下注射で行われていますので、免疫学的には粘膜免疫にアドバンテージのないワクチンです。乳児の能動免疫を期待するにあたっては、母親に接種したウイルス抗原が母乳中に入ることは極めて少なく非現実的であり、母親から母乳を介した受動免疫も粘膜ワクチンではないことより、感染防御に十分な分泌型IgA抗体の産生が母乳を介して誘導されない可能性が高く、期待できないと思われます。生後の児の免疫獲得を期待するのであれば妊娠中の母体へのワクチン接種と母体の免疫獲得、そのうえで臍帯を介した移行免疫による受動免疫が最も有用な方法と考えます。

日本産科婦人科学会のガイドライン、厚生労働省などの見解はどうなっていますか?

日本産科婦人科学会の診療ガイドラインでは、「インフルエンザワクチン接種の母体および胎児への危険性は妊娠全期間を通じてきわめて低いと説明し、ワクチン接種を希望する妊婦には接種する」、となっており、厚生労働省でも2009年の新型インフルエンザワクチンでは妊婦を優先接種対象にしました。その結果、2009年に添付文書が改訂され、現在の記載となっています。CDCのガイドラインでは、妊娠する可能性のあるすべての女性ならびに妊娠中の患者さんへインフルエンザシーズンでのワクチン接種を勧めていますが、ワクチンの種類は不活化ワクチンの使用に限定し、経鼻生ワクチン(国内では現在使われておりません)に関しては否定的です。また、卵アレルギーに関し、日本産科婦人科学会では、卵アレルギーのある方(鶏卵、鶏卵が原材料に含まれている食品類をアレルギーのために日常的に避けている方)は重篤なアナフイラキシーショックを起こす可能性がある(100万人に2-3人)ことを配慮し、ワクチン接種は行わないよう勧めています。

保存剤(チメロザールなど)の妊婦に対する影響について教えてください。

保存剤は細菌の繁殖を防ぐ目的で添加され、本邦ではエチル水銀チオサリチル酸ナトリウム(チメロザール)が含まれている製品と含まれていない製品があります。非妊婦に対する情報は多く、国内外でその安全性は報告されていますが、妊婦に対する情報は少なく、現時点では可否の判断は難しい状況と考えます。チメロサールに関しては、以前、発達障害との因果関係が指摘されていましたが、最近の疫学研究では、関連性は示されておりません。米国では接種可能としており、WHOでも「ワクチンに含まれる微量なチメロサールと神経性副反応の因果関係を見出すことは困難」とコメントしています。

妊婦への保存剤含有ワクチン接種の位置づけについて教えてください。

保存剤がなくともワクチン製剤の有効性、安全性が保持できるのであれば無添加のほうがよりよいとの考え方から、各国ともワクチンから添加剤を除去する方向で努力を行っており、実際、添加剤非含有の製剤が存在します。従って、保存期間は制限されますが、添加剤非含有の製剤を使用するほうが妥当と考えます。日本産科婦人科学会においては、「チメロザール含有ワクチンを妊婦に投与しても差し支えない、利用できる状況にあり、かつ妊婦が希望する場合にはチメロサールを含有していない製剤を接種するが、利用できない状況下(チメロサールを含有していない製剤入手まで時間がかかる)であり、かつ周囲でインフルエンザの流行がある場合にはチメロザール含有ワクチン接種を躊躇しない」としています。