日本脳炎ワクチン

新ワクチン、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン(ジェービックV)について

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a)開発の経緯(ジェービックVの資料より)
 日本脳炎は、蚊(主にコガタアカイエカ)が媒介する日本脳炎ウイルスによって起こる感染症で、発症すると死亡率は15%で幼少時や老人では死亡率の危険が大きく、精神神経学的後遺症は生存者の45〜70%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多いことが知られています。患者の発生は日本、韓国、中国、タイ、ベトナム、インド等の東南アジア・南アジア一帯さらにはオーストラリアまで報告されています。これらの流行地域では年間3〜4万人の日本脳炎患者の報告があります。
 現在においても日本脳炎に対する特異的な治療法はなく予防が最も効果的であることから、日本脳炎ワクチンは日本脳炎の流行地域の国々に居住する人々はもとより、これらの国々への旅行者にとっても非常に重要です。日本における日本脳炎の患者数は日本脳炎ワクチンの使用により1966年の2017人をピークに減少し、1992年以降発生数は毎年10人以下であり、そのほとんどが高齢者となっています。しかし、患者数が非常に少なくなった現在においても九州・沖縄、中国、四国地区といった西日本を中心として国内のほとんどの地域において、日本脳炎ウイルスを増殖する動物であるブタの日本脳炎ウイルスに対する抗体が陽転していることから、日本脳炎ウイルスの存在が証明されており、ワクチンの必要性が認められています。
 このような背景のもとに財団法人阪大微生物病研究会では、ウイルスを増殖させる宿主として欧米において不活化ポリオワクチンや狂犬病ワクチンの製造用細胞として実績のあるVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を使用した乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン(ジェービックV)の開発をおこないました。

(b)日本脳炎ワクチン製造法イメージ図


(c)日本脳炎ワクチンの作用部位・作用機序
 日本脳炎ウイルスは、ウイルスに感染したコガタアカイエカの穿刺により感染します。本ウイルスは局所のリンパ組織で増殖した後、ウイルス血症を起こし、血液・脳関門を通って中枢神経系に運ばれると、日本脳炎を発症すると考えられています。あらかじめ本剤の接種により、日本脳炎ウイルスに対する能動免疫、特に中和抗体による液性免疫が獲得されていると、感染したウイルスの増殖は抑制され、発症は阻止されます。

(d)新ワクチン、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン(ジェービックV)の副反応
 全観察期間中の副反応は、生後6か月以上90カ月未満の健康小児123例中49例(39.8%)に認められました。(本剤の1回目から3回目接種の累計)
 主なものは発熱(18.7%)、咳嗽(11.4%)、鼻漏(9.8%)、注射部位紅斑(8.9%)で、これらの副反応のほとんどは接種3日目までにみられました。

(e)伝達性海綿状脳症(TSE)について
 本剤(新ワクチン)の接種を希望する方にワクチン接種の必要性に加え、以下のTSEに関する事項を説明する必要性があるとのことでここに付けくわえさせていただきます。
 本剤の製造の極めて初期の段階で使用されるマスターシード及びマスターセルバンクの調製時に、米国産及び日本産のウシあるいは動物種、原産国の情報が明らかでない動物から採取した成分を使用しています。
 これ以降の製造の段階においては、これらの成分は使用していません。また、ワクチンに必要な成分のみを取り出す精製工程を続けています。しかしながら、マスターシードやマスターセルバンクの調製に使用した、上記の成分が完全に除去されたことを認識することはできません。
 現在の科学的水準において、TSE感染の危険性が全くないと断定することはできませんが、これまでに本剤の投与によりTSEに感染したという報告はありません。  (財団法人 阪大微生物病研究会)
(TSE、マスターシード、マスターセルバンクの詳細な説明はそれぞれをクリックして下さい)