脂肪肝とは
2017/04/09消化器
脂肪肝とは
はじめに:
近年日本では、肥満人口が増加の一途をたどり、結果内臓肥満を基盤に発症するメタボリックシンドロームが国民病となっており、その対策は急務となった。
非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease; NAFLD) はメタボリックシンドロームの肝病変で、長くその病態は進行しないという誤った概念が普及し、疾患としての重要性が見落とされてきた。NAFLDの中の進行する病態が非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis; NASH) である。
脂肪肝とは:
脂肪肝とは、肝細胞の脂肪沈着が病因である疾患である。脂肪肝の原因には、アルコール、肥満、糖尿病、高脂血症、脂質代謝異常、薬剤(ステロイド、テトラサイクリンなど)、Cushing症候群、中毒(黄燐など)などがあげられ、画像診断で診断される。
NAFLDとは、NASHとは
分類と病態:脂肪肝は大きくアルコール性と非アルコール性(NAFLD) に分類される。アルコール性肝障害はアルコール性脂肪肝(病理像:脂肪肝;steatosis)、 アルコール性肝炎(病理像: 脂肪性肝炎;steatohepatitis) 、アルコール性肝硬変と進行していくが、NAFLDは、脂肪肝にとどまり病態は進行しないと考えられていた。
しかし、NAFLDであるにもかかわらず、肝組織で脂肪肝にとどまらず脂肪性肝炎を呈する症例が認識され、この病態はアルコールに起因しないのでNASHと命名された。NAFLDは約90%が病態のほとんど進行しない単純脂肪肝(simple steatosis) であるが、他の10%は肝硬変、肝細胞癌へと進行していくNASHである。
NASHの特徴:NASHは脂肪沈着に加えて壊死炎症性変化を示し、その病態はほとんど線維化を認めない軽症例から肝硬変まで幅広い。
NASH発症の要因:NASHは、肝細胞への脂肪沈着を first hit として、何らかの second hit の因子が加わって発症する。つまり多くの人は単純脂肪肝にとどまるが、一部の人がNASHに進行する。second hit としては①酸化ストレス②TNF-αなどサイトカイン③インスリン抵抗性④肝代謝酵素CYP2E1の異常⑤鉄などが挙げられ、さらに遺伝子要因も重要である。
NASHの診断:まず、NAFLDを診断し、その後肝生検にて(肝病理像)、脂肪性肝炎を呈することである。病理像では活動性(grade: 肝細胞の膨化、脂肪沈着、炎症性細胞浸潤)と繊維化(stage)の重要度で診断される。
★非アルコール性脂肪性肝疾患 =NAFLD(nonalcoholic fatty liver disease)はNASHと単純脂肪肝からなる
約10%がNASH→→→肝硬変、肝細胞癌へと進行
約90%が単純脂肪肝(simple steatosis)