小児肺炎球菌ワクチン(プレベナー)(不活化ワクチン)

平成21年10月16日、厚生労働省の医薬・食品薬事分科会で、小児向けの7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)「プレベナー」が承認されました。平成22年2月24日から発売開始されました。世界保健機構(WHO)が推奨するワクチンです。

はじめに:
 肺炎球菌は市中肺炎*の起炎菌として最も重要であり、慢性気道感染症、中耳炎、副鼻腔炎、敗血症、髄膜炎などの原因ともなります。最近は「多剤耐性肺炎球菌」が問題となり、治療に難渋するケースも出てきました。また、肺炎球菌による髄膜炎はHib(ヒブ)による髄膜炎より頻度は低いものの重篤とされています。
 肺炎球菌は病原性が強く、全身感染症、いわゆる侵襲性肺炎球菌性疾患 (Invasive Pneumococcal Disease:
IPD) の場合には症状の進行が速く、重症度も高いことから世界的にも乳幼児及び小児における罹病及び死亡の主な原因となっており、そのため小児科領域においては最も重要な病原体のひとつとして位置付けられています。IPDは血液及び髄液等に肺炎球菌が侵入した状態と定義され、そのなかで菌血症を伴う肺炎、発熱を有する菌血症及び髄膜炎は代表的な疾患です。全世界で5歳未満の乳幼児における肺炎球菌による死亡は毎年100万人に上ります。
 PCV7は、90種類以上ある肺炎球菌の莢膜(肺炎球菌を覆う糖の膜)多糖体のうち、小児に侵襲性感染症を引き起こしやすい7つの血清型を無毒化したジフテリア毒素蛋白と結合させたワクチンです。
 国内では既に、成人を主な対象に23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン「ニューモバックスNP」が接種されています。しかし、免疫が未熟な乳幼児においても、莢膜多糖体ワクチンを接種しても抗体が十分に作られないため、より免疫原生の高い結合型ワクチンが望まれていました。

 *市中肺炎:一般社会生活を送っている人に見られる肺炎であり、健常人に多いものですが、高齢者あるいは種々の基礎疾患(心臓・呼吸器の慢性疾患、腎不全等)を有する人々にも見られます。


細菌性髄膜炎について:
 PCV7の適応は侵襲性肺炎球菌感染症の予防ですが、中でも重要なのが、細菌性髄膜炎です。原因菌の約55%を占めるインフルエンザ菌b型(ヒブ)に次いで、肺炎球菌は約20%を占めています。PCV7は肺炎球菌による髄膜炎の約75%を予防する効果があり、ヒブワクチン(詳細は左記をクリック)と合わせて接種すれば、髄膜炎の発症率は大幅に低下すると期待されています。肺炎球菌による髄膜炎はヒブによるものよりも死亡率が高いため、ワクチンによる予防は非常に重要とされています。
 日本では適応になりませんでしたが、米国などではPCV7は肺炎や中耳炎などの予防も適応となっています。

接種方法: 2カ月齢以上9歳以下の間にある者
生後2カ月齢以上7カ月齢未満(標準):
 27日間以上の間隔で1回0.5mLを3回接種。追加免疫は通常、1回0.5mLを12〜15カ月齢の間に1回接種。計4回接種。
7カ月齢以上12カ月齢未満:
 初回免疫:1回0.5mLを2回、27日以上の間隔で皮下に注射
 追加免疫:1回0.5mLを1回、2回目の接種後60日間以上の間隔で12カ月齢後に皮下に注射。
12カ月齢以上24カ月齢未満:
 1回0.5mLを2回、60日間以上の間隔で皮下に注射。
24カ月齢以上9歳以下:

 
1回0.5mLを皮下に注射。


副反応:
注射部位紅斑、注射部位硬結・腫脹、発熱(37.5℃以上)、易刺激性、傾眠状態、注射部位疼痛・圧痛。

市販直後調査期間中(2010年2月24日〜2010年8月23日)に収集された副反応は343例531件
(1)最も多かったものは発熱の178件

表1.発熱時の体温別の集計(n=178)
体温 件数
37.5℃未満
37.5℃以上〜38℃未満 16
38℃以上〜39℃未満 83
39℃以上 52
不明 22

表2.接種日から発現日までの日数の集計(n=178)
接種後の日数 件数
接種当日 81
接種1日後 75
接種2日後
接種3日後〜6日後
接種7日後以降
不明 12

表3.発現日から回復または軽快までの日数(n=148)
発現後の日数 件数
発現当日 16
発現1日後 50
発現2日後 29
発現3日後〜6日後 25
発現7日後以降 13
不明 15


(2)2番目は注射部位の副反応の171件
注射部位腫脹=87件
注射部位紅斑=57件
注射部位硬結=21件
注射部位疼痛=4件
注射部位そう痒感=1件


(3)発熱の頻度 (2009年度10月)
第1回目予防接種時: 24.9%
第2回目予防接種時: 18.6%
第3回目予防接種時: 24.7%
第4回目予防接種時: 22.5%